Japanese SUMO Wrestling

暑い…
外はセミの大合唱,今は8月,夏の真っ只中である.
暑い…
狭い床張りの小屋のような建物の中に,彼は仰向けに寝そべっていた.
暑さのあまり朦朧とする意識の中,Aveneは辺りを見渡す.
そこは例えると小ぶりの体育館のような,武術の道場のような空間であった.
部屋の中央には直径3mほどの円が,円の中心付近には50センチほどの線が2本平行に,白く描かれている.
「これは…土俵?相撲道場か?」
Aveneはつぶやく.
「いつまで寝てるんですか?早く来てくださいよ!」
快活な声が道場にこだまする.


ようやく鮮明になりつつある視界の中にで声の主を探すと,秋月涼である.
よく見ると涼は相撲のユニフォーム,つまりフンドシに身を包み,いや,包んでいるというより晒している部分のほうがはるかに多いのだが,仕切り線に仁王立ちしている.
「涼…?なにやってるんだ?」
「何って,この場所でこの格好で,ほかにやることがあるっていうんですか?」
涼は左足で四股を踏みながらそう言った.床張りに空間の狭さもあってか,ダンッ!と,涼のほっそりとした体からは到底想像できない,重みのあるいい音が道場に響いた.この暑さである,よく見ると涼は相当の汗をかいているようで,体のところどころが光を反射してテラテラと光っている.
「僕はなぜここに…というか,ここ,ドコだ?涼はなんでそんな格好なんだ?やる気満々すぎてチョットひくぞ?」
Aveneは状況をよく理解できず,涼に問う.
「何言ってるんですか今更?今日はあなたの運動不足解消もかねて,僕を男らしくするために相撲をしようってことになってたじゃないですか.この相撲道場,探すの苦労したんですからね…さあ!はじめましょう!」
ダンッ!涼はそういうと,今度は右足で四股を踏んだ.その衝撃で涼の全身から汗が辺りに飛び散る.夏の日差しを受けて光り輝く涼の汗のしぶきをみて,Aveneはただ美しいと感じていた.
気づくと自分自身も汗だくであり,寝ている体が直接床に触れていることに不快感を覚え,その場に立ち上がる.
立ち上がってみると,自分もしっかりと相撲のユニフォーム,つまりフンドシを身に着けていることに,いや,むしろほかの肌を隠すものを身をつけていないことに驚く.
「僕までこんな格好なのか…着替えた記憶が無いんだが.」
Aveneがボソリとつぶやく.
「やだなもう!さっき更衣室で一緒に着替えたじゃないですか!ぼくよりもむしろあなたがノリノリでした!」
「(…そうだったか?)」
「とにかく,はやく始めましょう!こっちに来てください.」
促されたAveneは重い足取りで涼が立っているのと逆側の仕切り線まで歩いてゆく.
「ちゃんと体を伸ばしておかないと,怪我につながりますよ?手加減はしませんからね!」
そういうと涼は,もう一度両足で四股を踏んだ後に,両腕を大きく広げ,手のひらをくるっと下に向ける動作をする.
「(ああ,テレビの相撲中継で見たままだなー)」
などとAveneは間抜けなことを考えつつも,
「(…でもあれって,ストレッチじゃなくて武器を隠し持ってないことを証明するための儀式なんじゃなかったっけな?)」
と,どこか冷静な意見を思い浮かべるがそっと心の奥にしまう.
「さあ,あなたも四股を踏んでください!気合いれていきましょう!」
「どうでもいいけど涼,その毎回語尾に!がつく暑苦しい話し方やめないか?ただでさえ暑いのに余計に暑くなる…」
「何言ってるんですかもう!もっとつけちゃいますよ!!!さあ始めましょう!!!」
ダンッ!ダンッ!そう言うと涼はもう一度四股を踏んだ.飛び散る汗.光り輝く男汗の蜜のような香りがAveneの鼻をつく.
ダンッ!ダンッ!Aveneも倣うように左右の足で四股を踏み,腕を広げる動作をする.
不思議と,そうすることで気分が昂ぶり,目つきが鋭くなってゆくのを自覚していた.
大相撲の力士もこうして自分を鼓舞していくんだろうか,などという思考が頭をよぎる.


「…」


「…」


二人とも真剣な表情で無言になる.視線を交錯させ,相手が倒すべき敵であることを認識しあう.
「はっけ,よぉい...」
涼がそっと仕切り線に手をつく.
Aveneが追って手を下ろしてゆく.
両者視線はしっかりと相手の目を捉える.緊張した空気が辺りを包む.道場の外ではセミが相変わらすの大オーケストラを続けているが,もはや二人の耳には届いていないであろう.
が,そこで涼が手を引く.両者,タイミングが合わない.お互い少し距離を置く.しかし鋭い視線は外さない.

少しの間を置いて,今度はAveneが先に仕切り線に腰を落とし,手をつく.
「はっけ…よーい」
全身から吹き出る汗.小さな空間に汗だくの男が二人,風通しも悪く,芳しい香りが道場内全体を包む.
鋭い視線のまま涼が腰を落とし,
手を地面にそっとつける,


瞬間,両者が飛び出す.
パッチィン!
たとえるならば,水にぐっしょりとぬれたタオルを勢いよく壁にたたきつけたときのような,激しい音が室内に響き渡る.
勢いよくぶつかり合った二人の体表を覆う体液が,どれほどの量だったかを物語るような,激しい音.
そのまま二人はがっぷり四つに組みあい,お互いの回しを離さないようにがっしりと掴み合う.両者の右手が上手を,左手が差し手を取り合う形になった.組み合った姿勢のまま,相手の出方をうかがうかのように静止する.いや,ちがう.遠目に見れば静止しているが,実際は両者ともに荒く激しい呼吸を繰り返しているため,かすかに体を上下させているのだった.
お互いの表情は見ることはできない状況である.しかし,肌と肌を密着させ,筋肉の些細な動きまで肌を通じて感じ取っていた.
抱き合ってみるまで気がつかなかったけど,涼って見た目よりも筋肉があるんだな,などとAveneは不謹慎なことを考えていた.腕に力を込めているせいか,涼の背筋が隆々と波打っており,筋肉の谷を立て続けに汗が流れ落ちては,フンドシの中へと消えていった.
その瞬間,涼は上手に力を込める.雑念が筋肉を,肌を,汗を媒体として,伝わったとでも言うのか.投げ飛ばされそうになるも,Aveneは何とか踏ん張る.
「へへ,今,余計なこと考えてたでしょ?隙がばればれですよ?」
「…手ごわいな,涼.本気で相手しなきゃダメみたいだ.」
言葉を交わすもつかの間,今度はAveneが仕掛ける.差し手を強く引き,倒しにかかるも,それ以上の力で涼が踏み込んでくる.両者の体がより密着する.


涼の首筋を,美しく光を放ちながら一粒の汗が流れ落ちる.


あまりの暑さに大量の汗を流しているのは,もちろん涼だけではなかった.二人の足元には,両者の全身からあふれ出る蜜が混ざり合い,ちょっとした水溜りのようになっていた.部屋中に濃厚な甘い香りを放つそれをうっかり踏んでしまうと,激しく滑り,あわよくば転倒してしまうであろう事は想像に難くない.
Aveneは間髪居れずに右手を強く引き上げ,上手投げを仕掛ける.汗を吸ったフンドシが,日ごろのダンスレッスンにより鍛え上げられ,程よく引き締まった涼の大臀筋に食い込む. それに反応してか,ただ単に足を踏ん張ったからなのか,くっきりと見事なえくぼ涼の両尻に浮かび上がる.見事だ.
「おっ...と」
体重が軽いことが災いしてか,涼はバランスを保てずによろめく.暑さと力みのせいで淡いピンクに染まった全身から汗が飛び散る.美しい.
「(…ここだ!)」


Aveneは右腕にさらに力を込める.細腕に申し訳程度に備わった上腕二等筋が悲鳴を上げる.涼は耐え切れず上手を離す.
勝負あった.
Aveneは勝ちを確信するも,今まで密着していた涼の胸板が自分から遠ざかっていくことに対して寂しさを覚えていた.熱く火照った涼の大胸筋によって加熱されていた自らの上半身が解放され,汗蜜の蒸発とともに急速に冷やされていくのを感じていた.それはまるで,心の熱が奪われていくような錯覚を引き起こした.
ドダンッ!
見事な上手投げ.
土俵の外にまたがるようにして涼がうつぶせに倒れる.手をついてかろうじて受身を取るが,体のあちこちを床にぶつける形となり,相当に痛そうだ.
「...ッ痛!」
「だ,大丈夫か?」
Aveneは自らが投げ飛ばした相手を気遣う.先ほどまでの敵意に満ちた視線はどこかへ消えていた.涼の傍らにしゃがみこむと,仰向けに返し,上半身を抱き起こす.いつもは衣装などなどに隠されているが,腹筋はもちろん,大胸筋もなかなか鍛えられている.華奢な涼である,ボディビルダーのようにボコボコと隆起しているわけではないが,うっすらと筋肉の分かれ目が浮かび上がっている.呼吸に合わせて上下する紅潮した肌とあいまって,夕暮れ時の静かな入り江に打ち寄せる穏やかな波のような,そんな美しさを見せていた.
顔をしかめ,涼はうっすら涙を浮かべながら目を開く.お互いの視線がお互いの瞳を捕らえる.先ほど鋭く交差させたものとは異なり,気遣いと,気恥ずかしさの混じった視線だった.


「...」


「...」


沈黙が気まずくなったのか,さらに顔を赤らめて涼が言う.
「え,えへへ.負けちゃいました.」
「ぶつけたところは大丈夫か?」
「このくらいどおってことないですよ.ご心配ありがとうございます.自分で立てますから,離してくださってだいじょうぶですよ.」
「...涼,おまえ,結構いい体つきしてるな.」
「え?何言ってるんです...」
そういうとAveneは,涼の腹直筋を上から下へとなで始めた.べったりと汗をかいているため,ぬるぬるとすべる.
「ちょっと,何を...やめてください...ってばっ.」
「わき腹もなかなかよく鍛えられてるな.ダンスレッスン頑張っているだけのことはある.ダンスは全身をハードに使うもんな.」
腹直筋から腹斜筋へと続くラインをさする.
「くすぐったいですよもぅ.」
しかし涼も抵抗はしない.
Aveneの慰撫はエスカレートし,大腿筋から内転筋へと手を這わせてゆく.
「ぎゃ...ぎゃぉぉ...ぉぉおおん」
「どうしたんだ?」








という夢をみたんだあぁぁぁあああ!これ以上はかけないよぉぉおおおお!!wwwwww
夢オチでごめんねぇぇぇぇえ!!wwww